トレッキングポール(ストック)について②

前回の続きの説明の前に、ストックの基本的な考え方の追加です。
ストックは、基本的なバランスの補助具と考えるべきで、ストックを使ったからといって必ず楽に山に行ける訳ではありません。また、登山靴や雨具のように、絶対に必要という物でもありません。
自分には必要か?どんな時に有効か?などを良く考えてから用意しても、決して遅くないと思います。

●下りなどでの使い方

ストックを突く位置
傾斜が緩ければ平地と同じ使い方ですが、そうでなければ、下りでは足より少し前の位置にストックを突くようにします。
ストックを突くタイミング
傾斜がきつい場合は、先にストックを突いてから足を移動させます。(写真左)さらに段差が大きい所などでは、足を出す前に2本とも先に身体の前に突き、後から一歩ずつ降りる場合もあります。(写真右)
ストックへの体重のかけすぎに注意
初心者の方は、必要以上に前方にストックを突き、その結果重心が足ではなくストックにかかり過ぎてしまい、安定した下りの歩行ができなくなる傾向にあります。
また、体重をかけ過ぎたストックがスリップして転倒している方を見ることがありますので、十分注意して下さい。

●さまざまな登山道での使い方

トラバース
片側に傾斜がある狭い横移動の登山道(トラバース)などでは、斜面によって左右のストックの長さを変えたり(山側を短く、谷側を長く)します。また、2本を束ねて使用したり、あるいは1本だけ使う場合もあります。
岩場
長い岩場の場合は、鎖や手掛かりを持てるように、ストックはザックに収納すべきです。短い岩場の場合は、2本とも片手に持ち、もう一方の手でしっかり手掛かりを持ちましょう。

※上記はあくまでも一例です。登山道の状況に合わせて、臨機応変に対応することが大切です。

●ストックのメリットとデメリットについて

メリット
①膝への負担の軽減
②バランスの補助
③全身運動が可能
デメリット
①バランス感覚及び脚力アップへの影響
②他人への危険
③登山道への悪影響

ストックを使っていると、足での歩行を補助し、バランスを崩した際はすぐストックをついて矯正してしまうため、脚力アップや自力でのバランス保持能力の効果が薄くなる場合があります。
そのため私の考えでは、若い方や、ザックが軽く1~2時間程度のルートであれば、あまり必要ないかと思っています。あえてストックを使わずに、トレーニングとして歩く機会があってもいいかもしれません。
 ※ただし私を含む中高年の方は、どうしても身体能力は落ちていますので、その補助としての利用価値は高いでしょう(一般的な人の場合、60代の方のバランス感覚は20代の30%、脚力は50%しかないとも言われています)。

●ゴムキャップについて

色々な意見があるとは思いますが、私の場合は、岩場の多いルートではゴムキャップは滑って危険なため、外して使用します(特に雨の日)。もちろん自然保護は大切なので、木道やお花が多い場所はザックに収納すべきでしょう。
また最近は、なくさないためにゴムキャップをテープで巻いたり、接着剤でとめたりしている人がいますが、これでは必要な時に外せないので私は感心しません。

●街中での携帯方法について

3段式であっても、一部の商品を除きストックはザックの中に入りません。ザックのサイド部に付けたまま電車やバスに乗っている人を見かけますが、いくらゴムキャップを付けていても背中に目はないので、とても危険です。
人の多い場所では必ず手に持ちましょう。

●メンテナンスについて

雪山や雨の日に使用した場合は、分解できるタイプのものは分解して十分乾かしましょう。そのままにしておくと錆びてしまい、稼動部が動かなくなる場合があります。また、潤滑剤などを使用してしまうと、滑ってロックしなくなることがありますので、乾かすだけで大丈夫だと思います。
なおカムレバータイプの場合、よくネジが緩んでロックしなくなる場合があるので、出発前にはチェックをして下さい。

●オマケの怖いお話し

ガイド仲間から聞いた話ですが、片側が藪の狭い登山道をWストックで歩いていた方が、突然消えて崖の下に転落。幸い擦り傷程度で済んだそうですが、話を聞くと、藪の延長上が地面と思い込み、ストックを突いた時バランスを崩したそうです(だから体重をかけ過ぎた使用はいけないんですよ)。
Wストックだからといって、いつも2本使うのではなく、このような場所ではザックに収めるか、1本にして山側で使用するなど、臨機応変な技術が大切です。