丹沢のヒルについて

今年から、旅行会社の新企画で「丹沢探検隊」というツアーを担当することになりました。今の季節はまだヒルの活動が活発のため、急遽ヒルについて書いてみます。
最初に『ヒルに血を吸われて病気になったり死んだ人はいない』
これは大切な事です。もちろん気持ちの良いものではありませんが、過剰に反応して危険地帯で慌てたりする方が何倍も危ないと思います。
丹沢のヒルは、元々は蛭ヶ岳の東面のごく一部で生息していましたが、ヒルの運び屋となる鹿などが増え過ぎてしまったことが原因の一つとも言われており、それには人間の行動も少なからず影響を与えていることを忘れないで下さい。とは言っても、やはり被害にあわないのに越したことはないので、私の知る範囲で対応策を書きます。

(1)丹沢における生息地と活動時期

①生息地
15年くらい前までは、ほとんどヒルに会うことはありませんでした。東丹沢で被害が出始めてから西丹沢にも出始め、個体数の多い少ないはありますが、残念ながら現在では丹沢のかなりの広範囲に生息しています。また、直射日光の当たらない湿気の多い山側の林道に多く、吸血対象物が通る場所にいます。
②活動時期
通常5月~10月、梅雨時から秋の長雨ぐらいの時がもっとも活動的で、雨の日や雨の翌日などさらに元気な気がします。活動時間は晴天なら朝夕が多く、日中は比較的少なくなりますが、雨の日は1日中活発に活動します。丹沢のヒルの多くは、落ち葉や地面で待ち構え、対象物からの振動や体温・二酸化炭素などを感じて取り付きますが、前回行った所は枝にいた可能性もありました。

(2)ヒルの被害に会わないために

①休憩場所を考える
ヒルの生息場所では休憩しないで、日当たりの良い場所で休憩する。
②肌を出さない
私は沢登り用の靴下やスパッツを履きますが、他に女性用のストッキングが有効と聞きます。目の細かい長めの靴下を履いたり、ズボンの裾は靴下に入れるなど工夫しましょう。
③塩水(濃度20%以上)やヒル対策の薬剤・消毒用エタノールを使用する
入山前に登山靴や靴下などに散布すると効果はあるようですが、定期的に散布した方がより効果的だと思います。
④こまめにチェックする
ヒルがついていないか、仲間同士でもチェックしましょう。またザックを無造作に地面に置くと、ザックから人の身体につくこともあります。

(3)被害にあってしまったら

①最初に書いたように、血を吸われても毒や病気を移されることはないので慌てないこと。
②エタノール等でヒルをはがし、爪等で血を搾り出す。
③エタノールや水で血を拭き、抗ヒスタミン剤(簡単な話、虫刺されの薬)を塗る。
④バンドエイドなどを貼っておく。

(4)その他

①ヒルは、痛みやかゆみを感じない「ヒルジン」という物質を出します。このヒルジンは血を固め難くするので、吸われた時は搾り出した方が早く血が止まります。
②ヒルの動くスピードは分速1mぐらいなので、登山靴に付くと意外に早くもぐりこんできますが、逆に早歩きすればついては来られません。
③もしヒルがついたら、必ず殺しましょう。足で踏んだぐらいでは全く死にません。塩を多めにかけるか、火で焼くのが確実性があります。
(ヒルは一度血を吸うと10~15の卵を産みます。取るだけで殺さない人が多いため、登山道ではない丹沢の大倉バス停での被害も出ています)

最後に、何度も言うようですが、確かに気持ち悪いことは間違いありませんが、ヒルを見て慌てないこと。もしそこが崖など危険な場所だったら、慌てて行動する方が何倍も危ないのですから。